犬に鹿肉を与えるときの基礎知識|国産鹿肉の衛生管理とアレルギー

犬に鹿肉を与えてもいいのか。食物アレルギーの心配はないのか。ジビエと聞いて、衛生面が気になる方もいるでしょう。

結論から書くと、鹿肉は衛生管理された施設で処理し、十分に加熱したものであれば、犬の食事に取り入れられる肉です。牛肉や鶏肉を中心に食べてきた犬にとっては新しいタンパク源になりやすく、鉄やビタミンB群を多く含む栄養面の特徴もあります。この記事では、国産鹿肉の衛生管理、アレルギーの考え方、栄養を順に整理しました。

  • 与え方:野生の獣肉は生で与えず、中心部まで十分に加熱する [※1]
  • 衛生管理:国産ジビエ認証は、衛生管理基準などを守る食肉処理施設を国が認証する制度 [※2]
  • アレルギー:犬で原因として多いのは牛肉・乳製品・鶏肉・小麦・ラム。食べたことのないタンパク源を選ぶのが基本 [※3]
  • 栄養:鹿の赤身肉は100gあたりたんぱく質23.9g・鉄3.9mg [※4]

犬に鹿肉を与えてもいい?ジビエをペットフードに使うときの基本

犬に鹿肉を与えることはできます。農林水産省は野生獣肉をペットフードに使う際の要点として、寄生虫や細菌などのリスクがあるため中心部まで十分に加熱することを挙げています [※1]。ペットフードとして加工された製品を選ぶか、家庭で与えるなら必ず火を通すことが前提です。

捕獲された鹿や猪の肉をペットフードに使う動きは広がっています。農林水産省の調査では、ジビエの利用量のうちペットフード向けは2016年度の150トンから2024年度には830トンに増え、利用量全体の約3割を占めています [※5]。

鹿肉の寄生虫と衛生管理|国産ジビエ認証で確かめること

野生の鹿肉で気をつけたいのは、病原体・寄生虫と、狩猟に由来する異物です。厚生労働省は、ジビエで注意すべきものとしてE型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌、旋毛虫(トリヒナ)を挙げ、人が食べる場合は中心部を75℃で1分以上、またはこれと同等以上に加熱するよう示しています [※6]。

ペットフードについては、農林水産省が次のような衛生管理の要点を示しています [※1]。

工程 主な管理 目的
受け入れ 金属探知機での検査、止めさし後まもない鮮度の良い原料を選ぶ 弾などの異物と品質の確認
原料の選別 銃弾の経路付近の肉は使わない 微生物汚染と鉛の残留を避ける
加熱 中心部まで十分に加熱 寄生虫・細菌のリスクを下げる
出荷前 金属探知機での再検査、サルモネラなどの微生物検査 製品の安全確認

出典:農林水産省「野生獣肉のペットフードについて」 [※1]。ペットフード中の鉛の上限は3µg/gと定められています。

原料を処理する施設の目安になるのが、農林水産省が2018年に設けた国産ジビエ認証制度です。衛生管理基準とカットチャートによる流通規格を守り、ラベル表示でトレーサビリティを確保している食肉処理施設が認証されます [※2]。鹿肉のフードを選ぶときは、認証施設の肉かどうかを確かめてみてください。

鹿肉は低アレルギー?犬の鹿肉アレルギーの考え方

鹿肉が食物アレルギーの犬の食事に使われるのは、多くの犬にとって食べたことのないタンパク源だからです。獣医皮膚科の専門医による解説では、犬の食物アレルギーの原因として多いのは牛肉・乳製品・鶏肉・小麦・ラムとされています [※3]。

除去食に使うタンパク源は、それまで食べてきた原材料を避けて選ぶことが基本です [※3]。牛肉や鶏肉中心のフードを食べてきた犬なら、鹿肉は候補になります。どのタンパク源を選ぶかは、これまでのフードやおやつの原材料をさかのぼり、獣医師と相談して決めてください。

見極めには時間がかかります。獣医学の総説によると、除去食を始めて8週間で9割以上の犬の症状がおさまっていたため、試験は少なくとも8週間続けることが勧められています [※7]。進め方は「除去食試験の正しい進め方」、原因になりやすいタンパク質は「犬の食物アレルギー原因タンパク質ランキング」で詳しく解説しています。

鹿肉の栄養|鶏肉・牛肉と比べた特徴

文部科学省の食品成分データベースで比べると、鹿の赤身肉は鶏むね肉(皮なし)と同じくらいのタンパク質を含み、脂質は牛もも肉の半分以下です [※4][※8][※9]。鉄は鶏むね肉の10倍以上、牛もも肉の約3倍あり、ビタミンB2やB12も多く含まれています。

成分(生・100gあたり) 鹿 赤肉 鶏むね 皮なし 牛もも 皮下脂肪なし
たんぱく質 23.9g 23.3g 20.5g
脂質 4.0g 1.9g 9.9g
鉄 3.9mg 0.3mg 1.3mg
亜鉛 2.9mg 0.7mg 4.7mg
ビタミンB2 0.35mg 0.11mg 0.21mg

出典:文部科学省 食品成分データベース(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年) [※4][※8][※9]

タンパク質・亜鉛・ビタミンB2は、皮膚と被毛の健康を保つのに欠かせない栄養素です。獣医皮膚科の専門医による解説では、タンパク質が足りないと毛がつやを失ってもろくなるとされています [※10]。これは人の食品としての生肉の値で、ドッグフードの成分は製品ごとに異なるため、比べるときはパッケージの成分値を見てください。シニア犬への取り入れ方は「シニア犬・老犬に鹿肉を」で紹介しています。

国産鹿肉のドッグフードを選ぶときの確認ポイント

選ぶときは、処理施設・加熱・原材料・目的の四つを確かめます。どれも商品ページやパッケージで確認でき、書かれていなければ作り手に尋ねることができます。

確認ポイント 見る場所 見方
処理施設 商品ページ、問い合わせ 国産ジビエ認証施設など、衛生管理を説明しているか
加熱・検査 商品ページ 加熱や金属探知機による検査について書かれているか
原材料 原材料名 鹿肉のほかにどんな肉・魚が入っているか
目的 総合栄養食・間食などの表示 主食なら総合栄養食か

原材料の並び順や表示の決まりは「犬のアレルギー対策ドッグフードの選び方と原材料表示の見方」で整理しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 犬に鹿肉を与えてもいいですか?

与えられます。野生の獣肉は寄生虫や細菌のリスクがあるため、中心部まで十分に加熱したものを与えてください [※1]。持病がある犬や療法食を食べている犬は、獣医師に相談してから取り入れましょう。

Q2. 犬が鹿肉でアレルギーを起こすことはある?

犬の食物アレルギーの原因として多く報告されているのは牛肉・乳製品・鶏肉・小麦・ラムです [※3]。鹿肉を食べたあとにかゆみや下痢などが続く場合は、与えるのをやめて獣医師に相談してください。

Q3. 鹿肉の寄生虫が心配。生で与えてもいい?

生では与えないでください。厚生労働省はジビエについて「生で食べる食品ではない」としており、旋毛虫(トリヒナ)などへの注意を呼びかけています [※6]。ペットフードでも中心部までの十分な加熱が要点とされています [※1]。

Q4. 犬に鹿肉を与えるとどんな効能がありますか?

鹿肉は薬ではなく食材なので、栄養の特徴で見るのが適切です。鹿の赤身肉は高タンパクで、鉄・亜鉛・ビタミンB2を多く含みます [※4]。

参考文献

  1. 野生獣肉のペットフードについて(農林水産省, 2025年6月)
  2. 国産ジビエ認証制度(農林水産省)
  3. Cutaneous Food Allergy in Animals(Pucheu-Haston CM, DVM, PhD, DACVD. Merck Veterinary Manual, 2025年8月)
  4. 食品成分データベース:しか にほんじか 赤肉 生(文部科学省、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)
  5. 捕獲鳥獣のジビエ利用を巡る最近の状況(農林水産省 農村振興局、2026年9月)
  6. 食事にひそむキケン~おいしく安全に食べるヒント~(厚生労働省 広報誌「厚生労働」2024年11月号)
  7. Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (1): duration of elimination diets(Olivry T, Mueller RS, Prélaud P. BMC Veterinary Research 11:225, 2015)
  8. 食品成分データベース:にわとり 若どり むね 皮なし 生(文部科学省、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)
  9. 食品成分データベース:うし 乳用肥育牛肉 もも 皮下脂肪なし 生(文部科学省、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)
  10. Nutritional Dermatoses(Prélaud P, DVM, Dipl ECVD; Harvey R. Encyclopedia of Canine Clinical Nutrition, 2007)

メゾン・ド・ジビエの鹿肉フードについて

メゾン・ド・ジビエの鹿肉は、国産ジビエ認証を取得した施設で精肉・製造したものです。主食の「天然鹿肉と8種類の雑穀ドライフード」はオールステージの総合栄養食で、原材料の先頭は生の鹿肉です。牛肉・鶏肉・乳製品・小麦は使っていません。

「天然鹿肉と有機玄米のやわらかリゾット」は、鹿肉・有機JAS認証の玄米・大根・キャベツ・にんじん・こんにゃく寒天粉末の6つの原材料でつくっています。生の鹿肉は金属探知機で検査し、出荷前にはパウチのピンホール検査も行っています。

このリゾットは、井上慎也先生(GREENDOG&CATアニマルクリニック東京ミッドタウン院長、ベックジャパン動物病院グループ皮膚・アレルギー科専科長)の開発協力・監修のもとで開発しました。食物アレルギーに配慮したレシピで、アレルギーに関する臨床試験も行いました。食いつきを良くするための添加物や香料、合成保存料は使っていません。

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